10代。特に15歳の時に戻れるならば、あなたは戻りたいと思うだろうか。「仕事も無いし、悩みも少なかったあの頃に戻りたい!」と反射的に思った人は、もう一度その時の事をちゃんと思い出してみて欲しい。

“青春”という言葉の響きから、人々はついまぶしくてキラキラと輝く爽やかな毎日を連想しがちだが、本当の青春とは、どうにもならない現状に嘆き、幼い自分に悩み、それでも望みだけは高いため、耐え続けなければならない苦しみの事ではないのか。

来年1月14日に公開される、園子温監督最新作の『ヒミズ』を観ていて、私は自分の青春時代について思いをめぐらせていた。

『ヒミズ』は、古谷実の人気漫画を原作とした衝撃の青春映画。「ふつうの未来」を夢見る中学三年生・住田祐一(染谷将太)は、クラスメイトの茶沢景子(二階堂ふみ)や、親しい仲間達との日々に少なからず幸せを感じていた。しかし、住田を疎み「お前のこと本当にいらないんだよ……」と口癖の様に繰り返す父親の姿に、住田の心は決壊してしまう。

2001年から2003年にかけて『ヤングマガジン』にて連載された『ヒミズ』は、今まで『行け!稲中卓球部』などギャグ作品が基本だった古谷実の全く異なる作風と、そのダークな内容から当時大きな話題となった。

そんな原作を、これまた『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』で知られる奇才・園子温監督が映画化をするというのだから、非常にハードな作品になると覚悟していたのだが、実際に観終わった後に残ったのは爽やかな感動、それだけだった。

実の両親から日常的に暴力を受け、生活費もままならない住田や茶沢がおかれている状況は誰にでもあてはまるものでは無い。けれど、だからと言って「これは映画の中のお話だから」と完全に切り離すことができない強さがこの作品にはある。

物語の前半は、住田の事が大好きで仕方がない茶沢の“猛プッシュ”シーンが基本となって展開する。住田が発した言葉「住田語録」を部屋中に貼り、住田の言動を夜思い出したら、ベッドの上で「きゃー!」と興奮しながらベッドでシタバタ。そこには、恋に恋する普通の15歳の少女の姿がある。

茶沢の奇をてらった行動の数々は、オトナ女子からすれば痛々しく思うかもしれない。けれど、好きな人の言動で一喜一憂し、彼のことを考えすぎて食事が喉を通らなかったり、気がつけば彼の名前をノートにつらつらと書き記していたり……そんな経験がきっとあなたにもあるはずだ。

それはこうして言葉にしてしまうと冒頭で言った様な「キラキラと輝く爽やかな毎日」に思えるかもしれないが、現実は苦しく、醜く、絶望の繰り返しだったのだと思う。“だった”と表現したのは、私も実際にそんな気持ちを忘れていたからだ。

この映画は、相手が自分の事をどう思っているかなどは考えず、むき出しの気持ちで人を好きになり、がむしゃらに毎日を過ごしていた苦しい青春時代を思い出させてくれる。自分の中“少女”を解放し、無我夢中で恋をしてみようと思えるのだ。

そして、世の中を悟っているようにクールな住田と対照的に描かれる、傍若無人で元気いっぱいの茶沢は、後半にどんどんと変化していく。どんなに大人びた少年の中にも、幼稚さがあり、どんなに子供っぽい少女の中にも母性がある。オトナ女子がはっとさせられるシーンやセリフが満載の、傑作青春映画の誕生と言えるだろう。(中村梢)

(C)「ヒミズ」フィルムパートナーズ

■作品データ
『ヒミズ』公式サイト
2012年1月14日(土)より、2012年1月14日(土)新宿バルト9、シネクイント他全国ロードショー
配給:GAGA