『幼い頃、女にはなりたくなかった。女になれば、辛く不幸な目に遭うだけ』

アフリカ・ソマリアの貧しい家庭で育ったワリス・ディリー(リヤ・ケベデ)は、13歳でラクダ5頭と引き換えに老人と結婚させられそうになり、家族から(ソマリアから)逃げることを決める。ロンドンで不法移民として路上生活をしていた彼女は、一流ファッションカメラマンにスカウトされ、“生きる為に”スーパーモデルになっていく……。

これはただの“シンデレラストーリー”ではない。
実在するスーパーモデル“ワリス・ディリー”が実際に体験した“女性虐待”の“告発”を目的として作られたものだ。

彼女が“スーパーモデル”になったのは、“LIFE(生活)”のため。
“女”を“モノ”のように扱うあの砂漠へ戻りたくない。
“女”として生まれ、“女として生きる”ということが“恥ずかしいこと”から“誇り”に変わるまでのストーリー。

初めての“友達”、“仕事”、“恋”……。
“女”でありながら、社会的地位や名誉を得ることが出来る日が来るとは、夢にも思っていなかったワリス。そんな彼女が、堂々とランウェイを歩き、観客を魅了する姿は、あまりにも美しく、逞しく、女としての“誇り”に満ちあふれ、彼女の“傷”を知っているからこそ、涙が溢れる。

貧しい家庭に育ったからとか、遊牧民の子だからとか、そんな表面的なことではない。ただの“シンデレラストーリー”をもてはやすマスコミにうんざりしていたワリスは、ついに彼女の傷口を開く決心をする。

祖国ソマリアで今もなお行われ続けている“女性虐待”に値する“しきたり”=“女性器切除(FGM)”。

生後1週間から初潮を迎える前までに行われ、排尿と月経のためにマッチ棒ほどの穴を残し、陰部を縫い付けられる。FGMをしない娘は“汚れている”と見なされ、娼婦と同じ扱いを受け、結婚する事が出来ない。(初夜に夫がナイフで切り裂いてこじ開けるまで、封鎖される)

ワリスはこのFGMによって姉妹二人を失った(切除の際の出血多量死)。本人も3歳の時にFGMを受け、ロンドンで縫合部分を開ける手術を受けるまで、排尿や月経時の激しい痛みで何度も気絶し、精神的苦痛は今も続いている。

『この無意味な“しきたり”をやめる勇気を持たねば。ほんの小さな試みでも、やがて大きな力となる』

“女性の人権”を守るため、勇気を持って告発したワリスを、同じ女として、応援せずにはいられない。
(ワリスの告白により、FGMの問題は広く公の場で議論されるようになった。しかし、今も尚、1日6000人の少女がFGMを行われている。)

不条理な現実と向き合うだけでも難しい。しかし彼女は向き合い、立ち向かい、決して諦めない。彼女の“強さ”に、“女”として生きる意味を考えさせられる一本。(安部沙織)

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この記事の執筆者

安部沙織

安部沙織

ニューヨークで映画制作を学び、30本以上の映画製作に参加。帰国後、映画『R246STORY[CLUB246](2008)』で脚本家デビュー。国際的に活躍出来る映画人を目指し、ハリウッドで活躍する田中靖彦氏(脚本分析家)に師事。脚本家・脚本分析家として活動中。オフィシャルサイトは→コチラ