「黒人用のトイレを別に作るべきだわ。病気でもうつったら大変だもの」

黒人メイドの前で平気でこのような発言をする白人女性。1960年代、人種分離法がまだ合法であり、人種差別感情の強いアメリカ南部では特に、黒人差別は必要以上にひどいものであった。

しかしどこの白人家庭も子守りや家政婦は黒人。白人にとって一番身近な黒人メイド。子供の頃から面倒を見てくれていた黒人のコンスタンティン(シシリー・タイソン)を家族のように思っていた記者志望のスキーター(エマ・ストーン)は、彼女たちの本音を聞き出し、本を出版することを決意する。

○ カップは手渡しせずにテーブルに置くこと。手が触れるから。
○ 自分の食器は毎日同じものを使い、どの食器を使ったか分かるよう、奥様にしまった場所を必ず伝えること。
○ 味見するスプーンは毎回新しいものを使うこと。同じものを使ったことがバレたら鍋ごと料理を捨てられてしまうから。

なぜ差別される側が差別する側にここまで気を遣わなければならないのか。

“LOVE ENEMY(敵を愛せ)”

マタイの福音書5章44節。ああ、そうか。教会で涙を浮かべる黒人メイドの姿を見て、胸が熱くなった。クリスチャンはこうして“愛”を生み出す。もちろん皆が皆できることではないだろうが、少なくとも憎しみに憎しみを重ねることは罪であることを知っている。そして敵をも愛すことができた時、本当の勝利がそこにあることを知っている。だからこそ、差別される側だけでなく、差別する側もこの映画を観て涙するのだ。相手に対しての同情でなく、自分自身の罪に苛まれて。

“黒人の地位向上を促すべく社会を煽動してはならない”

人種分離法にはそんな規則も定められていた。黒人の味方をしたり、黒人を差別する白人を批難するような行動を取れば、白人だからといって容赦はない。真実を話すことで迫害される可能性があった黒人メイドたちはもちろんだが、黒人メイドへの不当な扱いに声をあげようというスキーター自身も命がけだったはずだ。事実彼女はこのことをきっかけに、恋人と友人全てを失った。でも自分を育ててくれたコンスタンティンの言葉が、彼女にとっては何よりも心に残っていたのだろう。

「自分を憐れむのはやめなさい。“ブサイク”は心の中に育つもの。人の意見に流されず、運命を受け入れるのでなく、自分の人生を自ら切り開きなさい」

いじめられっ子だったスキーターに、コンスタンティンは強く生きることを教えてくれた。人が言ったことをそのまま信じるのでなく、それが正しいか自分で確かめる。他人の意見をそのまま受け入れるのでなく、自分が正しいと思うことをやってみる。つまり、“行動を起こせ”ということだ。この“行動”が、実は一番難しい。人の意見に合わせ、自分の意見を言わない方がずっと楽だから。

“結婚”が女のプライオリティだった時代に、周りに流されず、信念を貫き通したスキーターの強さと行動力に、前頭葉が刺激される。スキーターは決して美人ではない。しかし外見だけ繕った美人女優たちと比べて、なぜスキーターは輝いて見えるのか。心の中で育った“ブサイク”は顔に表れるのだ。自分の目で確かめて欲しい。(安部沙織)


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この記事の執筆者

安部沙織

安部沙織

ニューヨークで映画制作を学び、30本以上の映画製作に参加。帰国後、映画『R246STORY[CLUB246](2008)』で脚本家デビュー。国際的に活躍出来る映画人を目指し、ハリウッドで活躍する田中靖彦氏(脚本分析家)に師事。脚本家・脚本分析家として活動中。オフィシャルサイトは→コチラ