同世代の女性に焦りとプレッシャーを与えた「大人AKB」グリコのアイス「パピコ」のキャンペーン企画として、AKB48が30歳以上の期間限定メンバーを募集。約5000人の応募のなかから選ばれたのは、37歳で二人の子どもを持つ専業主婦、塚本まり子さんだった。

10代メンバーと変わらない華奢なライン、欲望にギラつく美魔女たちとは一線を画す清潔感。「友だちが私にナイショでオーディションに応募したら、受かっちゃったんです」とか言い出しそうと思っていたら、応募理由が本当に「ママ友からの推薦」。アイドル像が昭和なところも、秋元先生のお眼鏡にかなったのかもしれない。

■大人AKBのたゆまぬ女子力に脱力

アラフォー主婦アイドルの誕生に、ひっそり肩身の狭い思いをしている人々がいる。同世代の独女たちである。


「結婚して専業主婦になり、子どもを2人産んでもまだ“女”でいたいという執念を感じました。一方で最近、私はおしゃれを手抜きしている。古着のスカートなんぞを履いて、フラフラしていていいものかと自問自答しています」(美穂子さん/38才)

「“子持ち主婦でもこんなにカワイイ”などの声を聞くと、女性のハードルがどんどん上がっているように感じます。恋愛に無縁の場所にいる専業主婦がアイドルを名乗ったら、アラフォー独女はもう美容整形に走るしかなくなる」(由希子さん/38才)

35才を過ぎると、お肌は曲がり角どころかヘアピンカーブに突入し、シワシミ、くすみたるみが加速する。基礎代謝も落ちるため、少し油断すると中年太りに。歯周病は気になり、ひげも生えてくる。こうした状況ゆえ、若いコと並んでのモテ勝負はいつも超のつくハンディ戦。「女として美しくいること」は日に日にキツくなっていき、仕事を理由に恋愛戦線からの離脱を考える人も出てくるのだ。ゆるゆると年相応に生きようと。

しかしそんな独女らを鞭打つ(叱咤激励ではない)のは、美魔女であり大人AKBであり、セレブ主婦礼さんのメディアである。

仕事があっても信頼できる友達がいても、美しくなければ不幸せ。健康でも心から愛するペットがいても、恋愛をしていない独女はかわいそう。「結婚(恋愛)」と「美」こそが女の幸福と位置づけ、じりじりと人生の軌道修正を迫るのだ。

「美魔女は、女子校の中でカースト上位に君臨するのと同じメンタリティ」とは、フリーライターのカオルさん。

「30代後半以降で美を追求する女性は、意外と男性の方は見ていません。人間は、生きる価値を求める生き物ですが、無職(専業主婦)の場合は人生の目標を見つけにくい。だから美人の素質がある女性は、美貌や若返りに走るのでしょう。男にモテたいからアイドルを目指したわけではないと考えれば、『大人AKB』に80代女性の応募があったのも納得できると思います」

■意外と騒がれないのも「アラフォー」だから

ハードワーカーのみすずさんは、美しい主婦にスポットライトがあたることが多い理由に、「仕事を持っていたらAKBになりたいなんて思うヒマがないから」と話す。

「『○○ちゃんママと呼ばれたくない!』など、専業主婦は自分の存在意義を見失いがち。もともとアイドル志望のある女性が、承認欲求を満たす場として、美魔女や読者モデル、ママアイドルに踏み込むのではないでしょうか。レシピサイトで殿堂入りを果たすとか有名ブロガーになるとか、すべて大人AKBと根っこは一緒。人生に迷うくらいなら働きに出ればいいと思うのですが」

自分探しの行きつく先にあるのが「美貌」。ただ、生きている限り老化は止まらず、美しさにしがみつけばしがみつくほど年相応に生きるのは難しくなってくる。「大人AKB」は、独女だけではなく、主婦アイドル自らが自分に課すアイデンティティの度胸試し。期間限定メンバーとはいえ、この後の人生、おちおちおばちゃんに堕ちることはできない。

同世代の女性に焦りとプレッシャーを与えた『大人AKB』。ただし、アイドルに詳しい編集者の祐子さんは「話題性はあったけれど、ファンの間では盛り上がりに欠けています。そもそも一般的なAKBファンはメンバーと同年代。そのほかアイドル通の多くも、20歳を越えたらババア扱いしますからね。知り合いのグラビアページ担当のスタッフは、『アイドルとしてのピークはせいぜい15歳まで』とも。いくら美しいとはいえ、アラフォーでアイドルは難しいのかもしれません」とも。

アイドルファンたちの、あんまりな年齢差別がアラフォー女性を正気にさせる。そうか、私たちとっくにBBAだったんだ! それならば、結局大人AKBのキャンペーンって誰得だったのだろう? 今年のパピコはちょいとほろ苦いのである。(来布十和)

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この記事の執筆者

来布十和

来布十和

出版社、編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーランスライターに。中学生向けから主婦系まで女性誌を中心に幅広く執筆活動を行っている。得意分野は美容、料理、30代女性の恋愛&結婚ネタ。