「美魔女批判」に見るザ・昭和な良妻賢母幻想■ 美魔女批判に首をかしげるフツーのオバハンたち

今、美魔女がピンチである。

光文社の『美STORY/美ST』が仕掛けた美魔女ブーム。35歳以上の女性を対象にした「国民的美魔女コンテスト」では、1日5時間かけてスキンケアをする水谷雅子さん(1968年生)、元祖おっぱい美魔女の原志保さん(1969年生)、もうじき50歳になる山田佳子さん(1966年生)など、時空を超えた美しさを持つ主婦らを輩出。世の女性たちに年を経てもなお続く美の可能性を知らしめた。

そんな美魔女ブームにかねてから苦言を呈しているのが芸人の小籔千豊。とりわけ雑誌やテレビ番組で述べた持論はネットで話題になり、賛同を集めた。小藪の意見を大まかにまとめると以下の通りである。


・美魔女の美は時間とお金が潤沢だからこそ叶う。モデル出身などセミプロも多く、それをメディアがこぞって賛美するのはいかがなものか?

・美魔女をめざしたおかんが家事をほったらかしにして自分磨きしたら、子どもはどうなるの?

・きれいなだけでチヤホヤするのはおかしい。家事に子育てに節約にと奮闘しているザンバラ髪のお母さんたちは、美魔女を見ていてストレスがたまってかわいそうなのではないか?

・エステに通ったり高級化粧品でキレイになろうとする美魔女よりも、(中身が)すてきなオバハンはたくさんいる。

一方で、SNSに書き込むことはないけれど、小藪の「反美魔女論」に首をかしげる人も少なくない。声なき美魔女賛同派は、当のオバハンや独女たちである。

■ 「がんばるザンバラ髪のお母さんがかわいそう」の裏にあるBBA批判
アラフォー独女のミサキさん(35歳)は、美魔女批判=BBA(ババア)批判と感じた。

「小藪はアラフォー以上の女性がいつまでも年をとらず美しくいることで、若い女のコが焦りを感じるとも言っています。若いコがキレイにならなくてはと焦ったり悩んだりするのを危惧するのなら、むしろ国民的美少女コンテストに異議を唱えた方がいいのでは(笑)? 若いコを擁護しているようでいて、単純にBBAが美を追い求めることを批判しているだけ」

一介のオバハン代表だという佳子さん(42歳)は、「美魔女の対極にあるのが、家計を切り盛りして子育てにがんばるおかん」という図式に違和感を感じている。

「私、髪の毛振り乱して育児するとか嫌なんですけど(笑)? 家事育児に一生懸命なおかんを称賛するのは、古典的な価値観の裏返し。美魔女反対派の人たちは、自分の母親や妻が美魔女になることを認めず、良妻賢母であることを望むと思います。一見、女性の味方のようでいて、女性の自由を許していません」

サンバラ髪のオバハンだって、本当は美しくなりたいはずである。そのとき「家族のためになりふり構わず働く姿はすばらしい」と称賛されるよりも、「美魔女になりたいのなら、やりたいように自分磨きしてみたら?」と自由にさせてくれる夫のほうがどれだけ器が大きいことか。佳子さんは、美魔女批判が男性側から持ち上がったことも象徴的だという。

「キレイでもなんでもないオバハンをリスペクトするのはいいけれど、そういう人たちってどこまでオバハンの気持ちを理解しているのか疑問。大丈夫? アンタんとこの奥さん、家族の世話ばかりしていて、ストレスがたまっていませんか?」

独女の美羽さん(40歳)は「美魔女と対称的に中身が美しいとされているのは、子育て中のオバハンです。その論理でいけば、結婚すらしていない私はそもそも論外ってこと。結局大事なのはそこか? 女は結婚して子どもを産まないと輝かないのかと感じました」

小藪は、おかんが育児をほったらかしにして美に走るのはよくないと批判しているが、これについては「昭和時代の子どもの視点と同じ」と美羽さん。「言外に、オレをないがしろにするなという男の身勝手さを感じます」

女性の社会進出が進みワークシェアリングが叫ばれ、女たちの人生は良妻賢母神話の呪縛から解放されたはずであった。が、美魔女批判であらわにされた根強い「おかん至上主義」。結婚して子どもを産んで、身なりを気にする時間もお金もないからとぐるぐるのパーマをかけて……。美魔女を超える美しさって、そういうことでいいのだろうか? 2015年現在、肝っ玉母さんは絶滅危惧種となっている。(来布十和)

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来布十和

来布十和

出版社、漫画雑誌編集部バイト、編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーランスライターに。アイドル誌、育児誌、主婦雑誌から不動産パンフレット、パワースポット紹介まで手当たり次第の執筆活動を行っている。食べていくため仕事は選ばない主義。