image仕事が少しずつ波に乗るようになり、目指すキャリアも出てきた。でも出産はいつまでも後回しにできない……。

皆さんは、「キャリアを積む時期」と「出産のタイミング」との間で悩んだ経験はありますか?


■ 「産休はいつならベストか」と考えていたら、いつまでも決められない!?

2月20日より公開される映画『Maiko ふたたびの白鳥』は、ノルウェー国立バレエ団で活躍するバレエダンサー・西野麻衣子さんの葛藤を描いたドキュメンタリー作品。作中では、彼女が小さな頃から持っていた「母親になりたい」という願いと、「ダンサーとして第一線にいたい」という思いの間で葛藤する様子が映し出されています。
誰もがなれるわけではない「プリンシパル」という地位を手にした西野さん。ノルウェーでは知らない人がいないと言われるほどの存在ですが、彼女の女性としての葛藤は、一般の私たちとなんら変わりがないものでした。

著者の周囲でも、「仕事に悔いが残りそうだから、あともう1年だけ目指すキャリアに挑戦してから出産のことは考えたい(35歳)」「流行り廃りが激しい業界にいるので、1年も休んだら第一線には戻れないと聞いて迷っている(33歳)」という友人たちがいます。新人の頃ならまだしも、30歳も過ぎて懸命に働いてくると、自分の仕事にしっかりプライドを持てるようになったり、思うように仕事を回せるようになってきた充実感や、「せっかくここまで頑張ってきたんだし、もうちょっとだけ頑張りたい」といった思いを抱いたりする女性は少なくないようです。

子育て環境に恵まれたノルウェーに住んでいても、仕事を休むことへの不安は同じ。「産休が怖い」と語りながら、しかし西野さんは「いつならベストか、なんて考えても無駄だ」という結論に達します。「何歳で産んだとしても、キャリアの中で何かしら落としてしまうものはある」「決断をするときにしなければ、今後もずっと悩み続けるだけ」と悟り、出産を決意していくのです。


■ 「空いたポジション」を誰かに奪われる不安、常に応援してくれた親の反対も…。

「自分のキャリアが停滞する」だけでなく、「自分が休むことによって空いた席を、誰かに奪われてしまうのではないか」という怖さも、女性が出産を迷うときの理由のひとつと言えるでしょう。西野さんも、バレエ団側から「あなたが休んでいる間、空いているポジションは他の皆にとっては“チャンス”なのよ」と、ズバリ告げられていました。

日本でここまで明言する例は少ないでしょうが、実際のところはそのとおりですよね。基本的に“必要なポジション”は限られており、誰かに奪われたくなければ自分の価値を打ち出して、死守していくほかありません。西野さんには「いつかは引退すると分かっているけれど、まだ自分の席を譲りたくはない」という思いがあり、その上「出産によってダメージを受けた体で、以前のように踊れるようになるのか」という不安もあった-。そんななかで彼女は、自分より若くて元気な体を持った若手ダンサーに“示し”を見せるように、自ら復帰作に身体を酷使するハイレベルな作品を選ぶのです。

また西野さんを常に激励し、その夢を支え続けてきたお母様の意見も印象的でした。妊娠が分かっても踊り続けようとする西野さんを止めようとしたり、「仕事は辞めなくていいけど、トップでなくてもいいじゃない?」と言ったり…。出産時期の女性と母親との意見対立はよくあることのようで、周囲でも「小さい頃から私の努力を応援してくれた母親が、今になって結婚しろ、子供を産めとばかり言うので反発してしまう(32歳)」「(子供も生まず働こうとするなんて)あんなに勉強をさせなければ良かったわ、と言われてショックだった(44歳)」といった話を時々耳にします。

人生には幾つかのフェーズがあるものだし、ずっと仕事だけに没頭せず、家族を育む幸せも知ってほしい。そんな親心からの意見だと分かっていても、「自分の生き方を肯定してもらえない」と感じるのは、やはりちょっぴり寂しいことのようです。


■ 1回休んでも、「再スタート」を切ることはできる…!?

西野さんがさまざまなハードルを乗り越えて再びステージに復帰していく過程を見ていると、「キャリア」と「母になる夢」の両方を叶えるのは本当に大変なことなのだな…としみじみ。しかしながら、そこを乗り越えたことで得られる無限の喜びもある。大いに考えさせられました。

ちなみに母になった女性たちからは、こんな意見ももらいました。「子どもを産んでも、やりたいことをやりたい気持ちは消えないし、自分自身はあんまり変わらないよ」「失うキャリアもあるけど、子どもを持ったことでまた別のイスが空くこともあるよ」等々。今あるキャリアを仕切り直す不安は、きっと誰にでもある。それでも、愛するパートナーと子どもを望める幸福を手に入れたときは、失うものを怖がらず、「1回休んで再スタート」ということにトライしてみたいな…なんて思わされた次第です。『Maiko ふたたびの白鳥』は、2016年2月20日よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショーです。(外山ゆひら)


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外山ゆひら

外山ゆひら

心や生き方に関する記事多めのライター。恋愛相談コラムや作品レビューなども。カルチャーやエンタメ方面を日々ウォッチしています。