image監禁事件のニュースを見るにつけ、気に入った女性を「支配下に置こう」とする男性はいつの時代にもいるのだな…と改めて思わされる昨今。

先週から、監禁からの脱出を描いた映画『ルーム ROOM』の公開が始まっています。男性の支配から逃れたあとの心情、自由とは決して楽園ではないこと、子どもという存在、そして母親になることの意味――。人間としてはもちろん、女性目線で見ても大いに心を揺さぶられる感動作です。


■ 7年間の監禁生活、そして息子と“外の世界”へ

19歳のときに誘拐され、犯人宅の小屋に監禁させられた主人公ジョイ。性的暴力によって2年後には息子ジャックを出産。週に1度、犯人が物資を持って訪れる以外は、ずっと息子と二人きり。わずかに天窓とテレビの中から外の世界をうかがい知れる暮らしをしていました。しかしジャックが5歳を迎え、ジョイはジャックに「外の世界」を見せようと決意。命賭けの脱出計画を決行します。

賢いジャックの機転によって脱出は成功し、二人は晴れて自由の身になりますが、初めて「外の世界」と人々に出会い、戸惑うジャック。解放されて喜び勇んだジョイにとっても、失われた7年間の重み、家族の変化、世間の目など、想像以上に厳しい現実が待ち受けていて……。

人としての尊厳を奪われた過酷な監禁状況のなかでも理性を失わず、“頼もしい母”だったジョイ。しかし元の世界で人々に囲まれるようになると、「不安定さ」を見せ始めるのが大変印象的でした。それに反して、ジャックは母を守るために外の世界で「大人」になっていく。二人の細やかな心境の変化が、二人の天才俳優によって胸に迫ってきます。


■ 自由でいたい? 庇護下でいたい? 女性の願望と現実は

映画で描かれた「部屋—世界」の関係は、「支配—自由」の暗喩のように思えました。不当に支配下に置かれるのは問題外としても、ジョイが感じたように、「外の世界」は必ずしも女性にとって楽園であるとは限りません。

女性は長らく、男性に「外の世界」から庇護してもらう代わりに、「被支配」の側にいることが一般的でした。しかし、男女平等が進んでいくほど、世の中には「外の世界で戦って生きたい」と考える女性ばかりではない、という事実が逆に浮かび上がってきているように感じます。専業主婦を望む声を聞く限り、「外での自由を手にするよりも、家にいて“守り・守られる存在”であることを望む女性」は、今も一定の割合で存在する様子。朝ドラ『あさが来た』でも、この価値観の対比がこれでもかと描かれていましたよね。

かつて宇多田ヒカルさんも、「(女は)か弱いフリしてめっちゃ強い それでも守られたいんです」なんて歌っていましたが、心のどこかに「好きな男性に守られたい気持ち」も持ちながら、外の世界を生き抜くたくましさも身につけざるを得なくなった現代女性たち。一方、変わらず「女性を守りたい、守れる自分でいたい」願望を持ちながらも、その重みを支えきれないと主張し始めている男性たち。双方とも「気持ち」と「状況」が折り合わない今の日本で恋愛・結婚の幸せを手にするためには、男女とも柔軟になり、このあたりのバランスをうまく扱うスキルが必要なのかもしれません。

また、「私には社会を生き抜く強さはない」と思っていても、子どもの存在によって、たくましく目覚めていく女性も少なくないですよね。作中でも、ジョイが監禁生活から飛び出す勇気を持てたのは、息子ジャックがいてくれたからこそ。メディアに好奇と糾弾の目を向けられても、ジョイは「親は私だけ」と跳ね返していきます。

自分だったらどうするだろうか。ジョイのような強さを持てるだろうか。厳しい外の世界を生き抜くために、私たちに必要なものは何なのか――。女性の生き方についてさまざまに考えさせられる『ルーム ROOM』は、昨年末の米アカデミー賞にて主要4部門でノミネートされ、見事、主演女優賞を獲得した話題作。2016年4月8日(金)よりTOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズシャンテ他全国公開中です。(外山ゆひら)

(c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015


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映画『ルーム ROOM』 公式サイト

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外山ゆひら

外山ゆひら

心や生き方に関する記事多めのライター。恋愛相談コラムや作品レビューなども。カルチャーやエンタメ方面を日々ウォッチしています。