『92歳のパリジェンヌ』 (C)2015 FIDELITE FILMS - WILD BUNCH - FRANCE 2 CINEMA - FANTAISIE FILMS

普段はなんだかんだ文句を言いあっていても、よく長電話をしたり、一緒に旅行したり、自分の母親と仲のいい大人女性は多いですよね。独身女性からは、「周囲が子育て世代になって遊び友達が減った分、母親と出かける機会が増えた」なんて声も聞かれます。社会や家庭から重責を感じやすい世代の女性からは、「母親といるときだけは気が楽、娘に戻ってワガママが言える」なんて感じている人もいるようです。

しかしそんな母親も、いつかはいなくなってしまう。「そのとき」を皆さんは想像することがありますか?

■ 最愛の母親が逝ってしまうとき。あなたならどう受け止める?

10月29日公開の『92歳のパリジェンヌ(http://gaga.ne.jp/92parisienne/)』は、老いた母と大人になった娘を描いた映画です。92歳になり、日常生活もままならなくなるなか、自分の意思でひとり暮らしを続ける母マドレーヌ。ある日、以前から話していた「身体の自由が効かなくなったら、自分で人生を終わらせる」という計画の実行を発表し、家族を困難の渦に巻き込みます。


病気で亡くなるのなら「仕方ない」と思えることもあるかもしれません。でも老いた母親が自死を選ぶとなれば、通常、大抵の家族が反対をしますよね。しかしマドレーヌは信念ある女性で、自分の望む最期を毅然と貫こうとします。息子のピエールは「単なる年寄りのうつだ!」と医師に強引に治療を依頼し、愛する母親を強い言葉で批判し続ける。娘のディアーヌは、母の気持ちをなんとかわかろうと努力はするものの、どうしても「母がいなくなること」を受け入れることができず、矛盾した気持ちを抱えて葛藤し続ける――。

「親の意思を尊重してあげること」も愛情だと頭ではわかっていても、「母親が自分のそばからいなくなること」を心から受け入れられる子どもは滅多にいない。どんなに大人になっても、それは同じなのだな…としみじみ感じました。そしてまた、娘よりも息子のほうがヒステリックになり、母親の主張に反発する姿が印象的でした。そこにはやはり、「同性だからこそ、わかりあえる何か」があるからかもしれません。荷物整理の最中に、母の“女性としての過去”を知った娘に、母親が「あなたが知ってくれてよかった」と告げるシーンでは、同じ女性として分かりあえて嬉しい、そんな気持ちが伝わってくるのでした。

■ 母と娘には、“大人の女性どうし”の絆が生まれることも

「母と娘」のつながりは、とても複雑で強固な場合が多いです。世の中には、母親と折り合いが悪く悩み続ける女性も多数いますが、突き詰めると、愛情や理想を求める気持ちの裏返しであることもあります。

気の合う母娘の場合は、年齢を経ると、親友のような仲になることもしばしば。心の支えだった母親が死んだ後、娘が後追い自殺をしてしまった…有名人の悲しいニュースも思い出しましたが、女性は高齢になっても気丈な方が多いので、“大人の女性どうしの関係”になりやすい傾向はあるのかもしれません。介護施設の方から「女性のほうが高齢でもしっかりしている方が多い」という話や、友人から「父は退職後に人が変わったように覇気がなくなったけれど、母のほうは頭も心も健在なので、頼りになる」なんて話を聞いたこともあります。

息子と母、父親と娘といった関係に比べると、大人になってからも距離が近い「母と娘」の関係。だからこそ多くの女性にとって、母親との別れは大きな意味を持ちやすいのかもしれません。映画鑑賞後は、宇多田ヒカルさんの最新作を聴いたときと同じような気持ちになりました。恋愛でもそうですが、愛する人にきちんとお別れを言えるのは、自立をしてなくてはできないこと。母親がいつかいなくなるとき、つらくても受け入れられる自分になっていたい、それまで一緒の日々を大切に過ごしたい…なんてことを、改めて思わされるのでした。

フランス映画らしいロマンスも散りばめられながら、女性としての生き方や母親の存在について色々と考えさせられる映画『92歳のパリジェンヌ(http://gaga.ne.jp/92parisienne/)』は、10月29日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開です。(外山ゆひら

『92歳のパリジェンヌ』 (C)2015 FIDELITE FILMS - WILD BUNCH - FRANCE 2 CINEMA - FANTAISIE FILMS

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